個人投資家の皆様へ
当社は光学事業の単一セグメントですが、製品の用途から「新領域事業」、「半導体事業」、「ヘルスケア事業」の3つの事業に区分され、その特徴は以下のとおりです。
新領域事業
当事業では、国内外の光計測機器/光学製品メーカー及び大学等研究機関に向けて、単結晶・光部品(光デバイス)・レーザ光源・光学測定装置を開発・製造・販売しております。第23期における当事業の売上高は、741百万円です。国内外の展示会、学会への出展、当社ホームページへのアクセスなどを通じて、研究開発/試作の受託を重ねております。当社のコア技術は単結晶技術および光学技術であり、当社で製造した光学単結晶を加工し、ウエハ、チップ、光部品、レーザ光源、計測装置までの開発・製造・販売を一貫して手掛けております。当社の保有する技術を活用し、様々な顧客ニーズへの対応や、問題解決策を提供しております。これらの活動が新しいビジネスの可能性を拡げています。
当社のコア技術と製品化の流れ
IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)のさらなる活用により、クラウドを通じた工作機器の連携と自動化/無人化がさらに進むと考えられます。その中で、加工の条件をデジタル制御しやすいレーザ加工に注目が集まっています。特に現在の市場規模300~400億円程度(「Focus NEDO2018 No.68」より)とみられるマイクロ加工(半導体、電子部品、ディスプレイ製造)装置に搭載するレーザは、深紫外光のレーザ光を、短いパルスで照射することによる非熱加工(アブレーション加工)が有効とされ、有機ELの加工応用から市場拡大が見込まれると考えております。深紫外波長に強みをもつ当社の単結晶等の技術を搭載したレーザを開発し、新領域への参入を計画しております。
半導体事業
当事業では、半導体ウエハ*1)の検査装置メーカー向けに、単結晶とレーザの開発・製造・販売を行っております。第23期における当事業の売上高は、3,239百万円です。当社の単結晶とレーザは、販売先の最新機種に搭載されています。
半導体製造では投入するシリコンウエハの品質検査が半導体チップの歩留まり管理に不可欠であり、専用のウエハ検査装置が利用されています。単結晶とレーザには、半導体の微細化に伴う次世代製品の開発が常に求められており、当社は、市場の要求に応じた開発・提案を継続しております。単結晶は2006年に開発を受託し2011年から量産へ、レーザは2011年に開発を受託し2016年から量産に移行しています。
顧客が製造販売する検査装置においては、エンドユーザーである世界の半導体工場にて昼夜連続の稼働が要求されます。そのため搭載された単結晶やレーザには定期的なメンテナンス需要が発生します。メンテナンスは、概ね1〜2年の一定期間ごとに劣化した単結晶や光学ユニットを交換するもので、レーザの新規販売に従い累積的に増えることが見込まれるリカーリングの性質を持ちます。メンテナンスは、ほぼ事前予想が可能なため、景況の山と谷のギャップが激しいと言われる半導体分野にあって、安定した収益が見込まれます。第23期におけるメンテナンス売上高は、当事業売上の13%を占めています。
*1)半導体ウエハとは
半導体素子の製造材料。一般的にはシリコンを素材とするインゴット(円柱形の塊)を、0.5mm~1mm程度の厚さにスライスした円盤状の板を指します。半導体の主要な応用例は、スマートフォン等です。
ヘルスケア事業
当事業では、がんの診断に使用されるPET検査装置に搭載されるシンチレータ単結晶の開発・製造・販売を行っております。PET検査は、被検者に、がん患部に集まる薬剤を注射し、薬剤が放つ放射線を検出器でとらえて病巣を探るがんの検査方法です。従来のX線検診、CT検診に比べずっと小さな、早期のがん細胞まで発見することが可能です。PET検査装置では、放射線を光信号に変換し画像化するためのシンチレータと呼ばれる材料が必要です。当社では、その機能を担うシンチレータ単結晶を開発、製造しております。
シンチレータ単結晶およびPET検査装置用素子*2)
PET検査装置のしくみ
第23期における当事業の売上高は、1,772百万円です。全身検査用PET検査装置におけるシンチレータ単結晶の世界市場の約20%は当社のシェアです。
また当社のシンチレータ単結晶は、乳房検査用PET検査装置や、重粒子線を用いたがん治療のOpen-PET検査装置にも採用されています。加えてPET検査装置は、将来、がんの診断以外にアルツハイマー型認知症診断への適用範囲拡大が見込まれており、当社でも用途拡大に対応すべく研究開発を進めています。認知症は、高齢化により増加傾向が顕著で、診断への潜在的な需要が高まっています。
シンチレータ単結晶の製造装置
アルツハイマー型認知症人口
(全世界)
出所:World Alzheimer Report 2018
(国際アルツハイマー病協会)
*2)PET検査装置用素子とは
PET検査装置では、シンチレータ単結晶を数mm角×約25mm長の直方体に加工し、その素子を数万本、PET検査装置内に配列して使用します。このような直方体に加工した素子をPET検査装置用素子と呼びます。